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  • [注目の現地記事] インドでは外食産業が急成長中

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2012.11.30

【注目の現地紙記事】
「順調な成長を見せる外食産業」
Healthy growth in food business resource The Times of India (India: September 2, 2012)

【記事の概要】
レポートによると、現在同国の外食産業は年間約7500億ルピー(約1兆1250億円)の市場となっている。年平均17%の成長を続けるこの市場は、2015年までに1兆3700億ルピーまで成長することが予想され、投資対象としても注目を集めている分野である。

インドの外食産業はこれまでポテンシャルの高い魅力的な市場として考えられてはいたものの、その7割が非組織化された市場のままであった。しかし近年では、外資系のファストフードチェーンが参入し、組織化された分野のシェアが拡大しつつある。この分野の成長率は、市場全体での成長率を超えた、年間20-25%と推定されている。

こうした成長の背景には、インドの核家族化と可処分所得の増加がある。一般大衆による外食頻度の増加は、業界側にサービスと食品品質の確保を促すことにもつながっている。競争が激化する市場においては、消費者の期待に応えられる食品の提供を如何に持続させていくかがカギとなる。

【弊社分析・コメント】
▼現地動向

労働者階級のほぼ3分の1は、少なくとも月に一度は外食し、さらにその大半が一回の食事に101~150ルピーを消費しているといわれる。(参考:The Economic Times 2011)ムンバイやデリーなどの都市部では、外資系ファストフードチェーンや大衆向けインド食品チェーンによる新規店舗立上げが相次いでいる。他のASEAN諸国に比べると、現状での浸透レベルは未だ低いものの、今後確実に成長していく市場であることは明らかである。

▼インド料理と外食事情
インド料理は、日本人にとっては“カレー”と一括りにしてしまいがちな、スパイスをふんだんに使用した煮込み料理が中心である。日本の約9倍の面積を持つインドは当然地方によって気候も違い、好まれる料理も異なる。デリーやムンバイでは各地方のインド料理を食べさせるレストランも多く、食事時ともなると多くのインド人でにぎわいをみせる。他方、ピザハットやマクドナルド、ケンタッキーといった、外国のファストフード店舗も増えてきている。大型のショッピングモールでは、クルフィ(インドのアイスクリーム)を売るスタンドのそばに、ハーゲンダッツやコスタコーヒーのカフェ、ピザやパスタを提供するレストラン、さらには日本スタイル(焼き鳥や蕎麦、日本産ビールを提供)の居酒屋もある。つまり、ひとえに外食といってもその種類はインド料理から西洋的なものまで広がりを増してきているのだ。

▼インドの食事事情と健康問題
人口が12億人を超えるインドでは、全体の8割がヒンズー教、1.3割がイスラム教、その他キリスト教やシク教、仏教、ジャイナ教となっている。ヒンズー教徒が牛を神とあがめ、牛肉を食さないのは広く知られており、イスラム教徒が豚肉を食さないこともまた同様である。その他諸宗も、時期や祭事にちなんで断食や菜食のみの時があるなどする。そのためインドでは、ベジタリアンの人口も多く、レストランや加工食品販売においては、ベジタリアン・非ベジタリアンの表示が必ずつけられている。

外国系フードチェーンでも、こうしたインドの食事情に合わせ、ベジタリアンのためのメニューや、インド人が好むスパイシーな味付けをした独自メニューを提供しているところも少なくない。10月末にムンバイに1号店をオープンさせた大手コーヒーチェーンのスターバックスでも、インドでコーヒーよりも好まれる紅茶メニューを充実させ、顧客獲得に取り組んでいくそうだ。

ベジタリアンが多いとはいえ、大量のスパイス、塩分、油を使用して調理されるインド料理や砂糖を大量にいれる飲料を好むインド人の食生活は、決して健康的なものではない。事実、インドでは成人人口の3人に1人が高血圧、6人に1人が肥満、そして10人に1人が糖尿病を抱えている(health.india.com)。つまり、インドはメタボ大国と言っても過言ではないのだ。こうした健康問題を抱えるインドでは最近、健康食品や健康補助食品、カロリーを抑えた食品への関心が高まっている。

▼日本食のインド進出
健康問題の深刻化の要因となっているインド料理に比べ、一般的にヘルシーと認識されている日本食は、インドの外食市場においてどのくらいの需要を獲得していけるだろうか。既に現地展開している日本企業のほとんどは国内でも最大手メーカーばかりだが、経済発展と都市化が急速に進むインドにおける日本食の存在感はほとんどないとも言える状況だ。同じアジア圏の国として、インド人の日本人に対する一般的心象は良好なようであるが、食生活や文化の違いからか、日本におけるインドカレーほどには、インドでは日本食が身近に感じられていないようである。実際、高級ホテルに行けば、日本食レストランが入っているところは数件あるが、インドの一般大衆にはとても手が出る値段ではない。

年平均17%の成長を続けるインド外食産業は、国内が飽和状態にある日本にとって、とても魅力的なマーケットである事にまちがいはない。さらには、インドと日本には外交摩擦も全くと言っていいほどない。現在、インドに進出している日本企業は926社(2012年11月時点、在インド日本大使館調べ)だが、そのうちレストラン業と食品製造関連は、合わせて約15社である。

とはいえ、言うまでもないが、海外展開は容易ではない。日本でも有名なスターバックスでさえ、インド三大財閥の一つ、TATAと提携して今年9月までのデリーとムンバイでの初開店、年内50店までの展開を予定していたところを、10月末になってムンバイにようやく一店舗開店という状況である。インドにおける新規事業展開に、高いハードルがあることは否めない。しかし、急発展するインド社会と外食産業の成長を考えた時、それは無視するにはあまりにも大きな存在といえるのではないだろうか。

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