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2012.10.01

【注目の現地紙記事】
「カタールの建設コストが中東で最高額」
The ultimate Middle East business resource AMEinfo.com (Qatar: Wednesday, August 29, 2012)

【記事の概要】
イギリスを拠点に世界で建設資産コンサルタント業務を展開するEC Harrisによる、2012年国際建設コストレポートが発表され、53ヶ国を対象として実施された建設コスト評価において、カタールが建設コストが高い国の第13位となった。カタールは前年度調査は16位であったが、1年間で3つも順位を上げ、中東で最も建設コストの高い国となった。

同レポートは、2022年のサッカーワールドカップ開催地に決定されたカタールでは、現在多くの建設プロジェクトが進行中であるため、それが同国の建設コスト上昇につながったと分析している。政府予算のおよそ40%が社会インフラ整備に投資されるなど、カタールは今や国家を挙げて建設事業に取り組んでいる。EC Harrisによると、カタールの建設プロジェクトを成功させるためには、今後それに関わるサプライチェーンの安定化や計画実施への戦略的展開が求められている。

また、ドバイショックから回復しつつあるUAEやサウジアラビアでも、多数の建設プロジェクトが進行しており、それぞれ建設コストランキングにおいては、カタールに及ばないまでも順位を上げている。

【弊社分析・コメント】
▼カタールという国

“ドーハの悲劇”-この言葉を聞いても、それが何を指すのか知っているのは、30代以上の世代にしかいないだろう。今からはや20年近くも前(1993年)、日本がワールドカップ出場をロスタイム終了間際のほんの数秒間の失点で逃したのが、ドーハの悲劇である。しかしその記憶も、サムライブルーやなでしこジャパンが華々しい活躍を見せる近年ではもはや話題になることはほぼなくなった。ましてや、悲劇の舞台となった「ドーハ」が話題に上ることは皆無に近いのではないだろうか。

ドーハは、アラビア半島の小国カタールの首都である。面積は秋田県とほぼ同じくらいで(11,437㎢)、総人口170万人のうち、カタール人はわずか30万人、その大多数が移民や外国人労働者で占められる。カタールにあるもので最もよく知られているのは、世界的メディアのアル・ジャジーラ(拠点をドーハに持つ)くらいで、ドバイやアブダビなどの華麗な発展の陰で今まではあまり目立つ存在ではなかった。

▼カタールの名目GDPは2年連続世界一
近年のカタールはUAE諸国をしのぐ勢いを見せている。国民1人当たり名目GDPは2年連続で世界一にランクされ(IMF2010,2011)、国際競争力ランキングでは日本に次ぐ11位になった(World Economic Forum 2011)。そして、前述の建設コストは、中東で最高額。
カタールのこの発展を支える柱が、中東ならではの石油産業である。

カタールの石油生産量は世界第18位、LNG(液化天然ガス)の輸出量は世界第1位(天然ガス全体では5位)である。LNG輸入量世界1位の日本(1,070 億㎥/年、BP2012 )に対するカタールの輸出量は相手国別で3位となっている。現在、日本のLNG輸入量全体に占めるカタールからの輸入の割合は約10%だが、先日(9/26)関西電力が2013年から15年間に及ぶ毎年50万トンのLNG輸入契約をカタールと結ぶなど、日本にとってもこの分野でのカタールの存在感は重要度を今後さらに増してくることは明らかである。

▼カタールの国家ビジョン
カタールの石油産業はGDPの50%以上で、輸出収入の約85%、そして国家収入の70%を占める(EC Harris)。カタールは、リーマンショックによる影響はあったものの、豊富な石油資源を背景に急速且つ順調に回復し安定的発展を見せている。政府は、石油収入に依存する現在の経済構造の多様化をめざし、2030年までの国家戦略を打ち出している。2022年FIFAワールドカップ誘致は、この国家ビジョンの一環であり、他にも、各種国際会議やスポーツの国際大会誘致のほか、教育都市や観光リゾート、大規模商業地プロジェクトなど多くの開発計画に着手している。多くの開発計画は、カタール財団など自国勢力による投資で、欧米や日本の大手ゼネコンが参画している。

また、カタール航空はイギリスのSKYTRAXによるランキング(World Airline Award)で2年連続1位、五つ星を獲得するなど、観光振興とその関連産業の発展もめざましい。これら、開発計画・経済発展の最盛期となるのが2022年のワールドカップと言えるだろう。誘致のためのカタール政府の努力と、スタジアムや関連施設への投資は並々ならぬものであった。誘致合戦が佳境を迎えていた2010年南アフリカワールドカップ開催期間中のカタールの広報活動への力の入れ様は、開催地は既にカタールで決定しているとさえ思わせるくらいのボリュームであった。

クリーンエネルギーと言われる原子力発電の安全性が問題視され、そして再生可能エネルギーがコストと安定供給の問題をクリアできずにいる昨今、天然ガスには新エネルギーとしての期待が高まっている。カタールの天然ガス推定埋蔵量は、ロシア・イランに次いで世界3位を誇り、この分野におけるカタールの優位性は非常に高い。
新しい産業や小売市場の発展の余地は未知数であるが、カタールが日本に寄せる期待は大きい。柔軟な思考でアジアの島国からアラブの小国をステージにした新たなビジネス展開を考えるのには今が最もいい時期と言えるかもしれない。

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