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2012.09.12

[注目の現地紙記事]
拡大するムスリムの国際観光市場
(AME info.com -The ultimate East business resource)
 

【記事の概要】
▼拡大するムスリムの国際観光市場
記事では、ディナール・スタンダード(Dinar Standard)による「グローバル ムスリム ライフスタイル トラベル マーケット:展望と消費者ニーズ」調査をもとに、他国を上回る勢いで成長するムスリム(イスラム教徒)の観光支出について紹介し、観光産業におけるムスリムの需要について述べている。同調査は、ムスリムの国際旅行が増加していることに着目し、観光とその関連産業におけるムスリムをターゲットとしたサービス改善などに示唆を与えるものである。

イスラム教の教えや文化背景により、西欧諸国とは大幅に異なる価値観やライフスタイルを持つムスリム達をより多くひきつけるための努力が、ムスリムの国際観光市場において重要であると示唆を与えている。また、世界のムスリム観光客の旅行支出総額の60%を中東北アフリカからの旅行者が占めていることも紹介されている。

【弊社分析・コメント】
▼世界人口のほぼ4分の1を占めているムスリム
この夏のロンドン五輪では、開催全日程がムスリムのラマダン(断食月)と重なっていることが問題視され、話題となった。結果的に国際オリンピック委員会は日程の変更を見送ったが、全出場選手数約11,000人の内、およそ3,000人がムスリムであったことを考えると今後も無視できない問題だ。

この話題でムスリムの存在感を認識した人も多いと思うが、既に世界におけるムスリム人口は約16億人に達しており、世界の総人口の約23%を占めている。さらに、その人口増加率(1.5%)は非ムスリム人口の増加率(0.7%)を上回っている。ムスリム人口が最も多いのはアジア太平洋地域で、次いで中東・北アフリカ(MENA)、サブサハラ・アフリカとなっている。

※MENA=Middle East and North Africa
※サブサハラ・アフリカ=サハラ砂漠以南の地域

▼産油国のムスリムと観光市場
2030年には世界人口の4分の1を占めるようになると予想されているムスリムであるが、既にその存在感が観光産業において如実に表れている。以下は、記事が紹介しているディナール・スタンダードによる調査の一部であるがこの表から、国別観光支出上位のアメリカや中国よりも、ムスリム観光客の支出の方が多いことがわかる。

観光市場に他の先進諸国をしのぐ勢いのムスリム観光客のうち、全体の約60%を占めるのが、MENAのムスリムである。OIC(Organization of Islamic Cooperation:イスラム協力機構)加盟国ベースで見たムスリムの国外旅行数上位国は、上から順にサウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦、インドネシア、クウェートとなっており、そのうちインドネシア以外の4か国が、世界原油生産量の統計で上位10か国に入るMENAの産油国である(図4)。MENA諸国は、人口数でこそアジア・太平洋地域に及ばないが、豊富な石油資源を背景にしためざましい経済成長を続けている。

世界最大のムスリム人口を持つインドネシアは、石油に大幅に頼る経済構造を持つMENA各国に比べると、2008年の世界的大不況の影響が比較的少なかったため、経済も安定している。ムスリム観光支出上位5か国全体で見てもGDPは成長を続けており(図6)、ムスリムの国際観光者数・支出の一層の増加が見込まれる。

▼ムスリム観光客獲得のカギ
ここまでいかにムスリム観光市場の成長がめざましいかを見てきた。成長の一途をたどるムスリム観光市場で利益を獲得していくためには、ディナール・スタンダードがいうように、イスラムの教義に則した食事やサービスを充実させることは不可欠である。しかし、ただそれらを準備して待っているだけで、ムスリム観光客数の増大や継続的収益を見込むことは安易である。なぜなら、観光産業振興は、石油収入に依存するMENAを中心とした産油各国が、近年国策として積極的に取り組んできた分野であるからだ。

MENAの産油各国は、莫大な石油収入による豊富な資金をもとに、多くの宿泊やレジャー施設を用意することができる。さらにこれらの国々は、同じイスラム信仰を持ち、宗教的・文化的にも壁が少ない。非ムスリム諸国がムスリム観光客を獲得していくためには、これらの国々に対抗していかなければならないのである。ゆえに、非ムスリム諸国はムスリム観光客誘致のために、彼らのデマンドに応えうる環境やサービスを用意するだけでなく、観光地としての独自の魅力開発にも取り組んでいく必要がある。

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